在職中にスキルを学び、転職まで一体で支援を受けられるのがこの事業の特徴です。厚生労働省の教育訓練給付とは別の制度なので、まず仕組みの違いから押さえましょう。
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、経済産業省が認定した補助事業者を通じて、キャリア相談・スキル習得(リスキリング)・転職支援を一体で受けられる制度です。在職中の方が新しいスキルを学んで転職する流れを、費用面と伴走面の両方で後押しすることを目的としています。
名前が似ているため「教育訓練給付」と混同されがちですが、管轄も仕組みも対象も別の制度です。この記事では、最大いくら補助されるのか、どんな人が対象になるのか、どこから申し込むのか、そして教育訓練給付との違いを、2026年6月時点の公式情報に沿って整理します。
結論: 在職中に学んで転職する人向けの「経産省」の補助事業
この制度の要点
- 管轄は経済産業省。厚労省の教育訓練給付とは別制度で、併用はできない
- 対象は原則『在職者で、雇用主の変更をともなう転職を目指す人』(登録時・初回面談時に雇用契約があること)
- 補助は2段階。受講修了で受講料(税別)の1/2・上限40万円、転職して1年継続就業でさらに1/5・上限16万円=合計最大56万円
- 申込は経産省が採択した『補助事業者』経由。受講前のキャリア相談が必須で、相談・転職支援は無料
- 2026年6月時点で六次公募は終了・七次は未定だが、事業は令和8年度末(2027年3月末)まで継続予定で採択済み事業者経由で利用できる
ポイントは「在職中」「転職前提」「補助事業者経由」の3つです。すでに働いていて、学び直して転職したい人のための制度なので、離職中の人や転職を考えていない人は対象外になりやすい点を確認しましょう。
まず整理: 教育訓練給付(厚労省)とは別の制度です
もっとも誤解されやすいのがここです。「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は経済産業省の事業で、当サイトで別途解説している教育訓練給付(一般・特定一般・専門実践)は厚生労働省の制度です。管轄も、申請窓口も、補助の出方も異なります。
| 比較軸 | リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 教育訓練給付(参考) |
|---|---|---|
| 管轄 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
| 申込・窓口 | 経産省が採択した補助事業者(民間スクール等)経由 | 原則ハローワーク(受講後に申請) |
| 対象者の軸 | 在職者で、転職を目指す人 | 雇用保険の加入期間など一定の要件を満たす人 |
| 補助の上限(目安) | 合計最大56万円(受講修了40万円+転職1年継続16万円) | 講座区分により上限が異なる(上限10万〜20万円台が中心) |
| 対象講座の傾向 | 転職につながりやすい講座に限定されやすい | 資格・大学院・語学など幅広い |
| 併用 | 教育訓練給付の対象講座とは併用不可 | — |
いくら補助される?最大56万円の内訳
この事業の補助は2段階で支給されます。一度に全額が出るのではなく、「受講を修了したとき」と「転職して1年間続いたとき」で分かれている点が特徴です。受講料(税別)を基準に計算されます。
| タイミング | 補助の内容(2026年6月時点) | 受け取れる条件 |
|---|---|---|
| ① 受講修了時 | 受講料(税別)の1/2相当・1人あたり上限40万円 | 対象講座を修了すること |
| ② 転職して1年継続就業後 | 追加で受講料(税別)の1/5(20%)相当・1人あたり上限16万円 | 受講後に転職し、転職先で1年間継続して就業すること |
| 合計(最大) | 受講料の最大7割相当・合計上限56万円 | ①と②の両方の条件を満たした場合 |
受講しただけで対象になるのは前半の最大40万円分までです。後半の16万円分は「転職して1年継続した人」が対象になるため、転職しない場合は受け取れません。
対象になるのはどんな人?(在職者・転職前提が基本)
この事業は誰でも使えるわけではなく、対象者の条件がはっきり決まっています。キーワードは「在職者」と「雇用主の変更をともなう転職を目指す」の2つです。
| 向いている人 | 向いていない人 |
|---|---|
| 今、企業などと雇用契約がある在職者(登録時・キャリア相談の初回面談時に在職していること) | 現在離職中の人(在職要件を満たしにくい) |
| リスキリング後に、雇用主の変わる転職を目指している人 | 今の会社に残る前提で、転職を考えていない人 |
| 在職中に学び直して、より条件の合う仕事へ移りたい人 | 社内異動・昇格だけが目的で、雇用主の変更を伴わない人 |
| 費用負担を抑えつつ、伴走型のキャリア相談・転職支援も受けたい人 | 学びたい講座が補助事業者の対象講座に含まれていない人 |
申込の流れ: 採択された「補助事業者」経由で進める
この事業は、利用者が経済産業省や事務局へ直接申請するのではなく、経産省が採択した「補助事業者」(民間のスクールやキャリア支援会社など)を窓口に進めます。大まかな流れは次のとおりです。
公式サイトや各社の案内で、採択された補助事業者と、その提供する対象講座(Web・プログラミング・デザインなど転職につながりやすい分野が中心)を確認します。学びたい内容と転職の方向が合うかを見ます。
選んだ補助事業者に登録し、まずキャリア相談を受けます。受講申込の前にキャリア相談を受けることが必須で、ここで現状の在職状況や転職の希望を整理します。相談自体は無料とされています。
相談を踏まえて受講する講座を決め、リスキリング講座を進めます。費用や支払い方法、補助がいつ・どう反映されるかは事前に補助事業者へ確認しておきます。
対象講座を修了すると、受講料(税別)の1/2・上限40万円までの補助の対象になります。修了要件や手続きは補助事業者の案内に従います。
補助事業者の転職支援を受けながら転職活動を進めます。転職支援も無料とされています。
転職後、転職先で1年間継続して就業すると、追加で受講料の1/5・上限16万円までの補助の対象になります。ここまで満たすと合計最大56万円が目安です。
申込の入口は「補助事業者を選んでキャリア相談を受ける」ことです。ハローワークに行く教育訓練給付とは流れが違うため、まずは利用したい補助事業者の公式説明や無料相談を確認しましょう。
2026年の公募状況: 七次は未定、ただし事業は継続予定
この事業は「公募」で補助事業者を募集し、採択された事業者がサービスを提供する形です。そのため、利用できるかどうかは採択済みの補助事業者がサービスを継続しているかに左右されます。
| 項目 | 2026年6月時点の状況(公表情報の整理) |
|---|---|
| 六次公募 | 令和7年(2025年)9月に締切となり終了。採択結果も公表済み |
| 七次公募 | 実施は未定。詳細が決まれば事業の公式サイトで公表される見込み |
| 事業全体の期間 | 令和8年度末(2027年3月末)まで継続される予定 |
| 今から使えるか | 採択済みの補助事業者を通じて、引き続き利用できるとされている |
利用前に知っておきたい注意点
- 転職前提の制度です — 後半の追加補助(16万円分)は転職して1年継続就業した人が対象です。転職しない選択をすると、その分は受け取れません。
- 補助の出方は事業者で異なります — 受講料を先に支払い後から戻る運用か、最初から軽減されるかなどは補助事業者次第です。資金繰りも踏まえて事前に確認しましょう。
- 対象講座は限定されます — 転職につながりやすい分野に絞られる傾向があり、学びたい内容が必ず対象とは限りません。
- 教育訓練給付とは併用できません — 同じ講座で両方を使うことはできません。どちらが自分に合うかで選びます。
- 上限額・条件は変わり得ます — 本記事の数値は2026年6月時点の整理です。申込前に公式の最新情報を確認してください。
どんな人にこの制度が向いているか
制度の特徴を踏まえると、向いているのは次のような人です。
| あなたの状況 | この制度との相性 |
|---|---|
| 在職中で、学び直して転職したい | 相性が良い。受講+転職支援が一体で、補助も大きめ |
| 在職中だが、まだ転職するか迷っている | 前半(受講修了分)は対象になり得るが、後半は転職前提。方向を固めてから検討 |
| 離職中・求職中である | 在職要件を満たしにくい。教育訓練給付など別制度の検討が現実的 |
| 今の会社に残って学びたい(昇格・異動目的) | 雇用主変更の転職が前提のため対象外になりやすい |
| まず費用を抑えて資格・幅広い分野を学びたい | 対象講座が限定されるため、教育訓練給付のほうが合う場合がある |
在職中で、転職したい方向性があり、Web・AIなど転職につながりやすい分野を学びたい人ほど制度と相性が良いです。そうでない場合は、厚労省の教育訓練給付など別の選択肢も比較しましょう。
よくある質問
リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業とは、ひとことで言うと何ですか?
個人でも申し込めますか?どこから申し込むのですか?
在職者でないと使えませんか?離職中はどうなりますか?
教育訓練給付と何が違いますか?併用できますか?
転職しなかった場合、補助はどうなりますか?
今(2026年)からでも利用できますか?
受講料はいったん全額払う必要がありますか?
まとめ: 在職中に学んで転職するなら検討価値が大きい制度
「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」は、経済産業省が補助事業者を通じて在職者の学び直しと転職を一体で支援する制度です。受講修了で受講料の半額(上限40万円)、転職して1年継続就業でさらに20%(上限16万円)、合計最大56万円が目安となり、補助の規模は大きめです。一方で、在職者・転職前提・補助事業者経由・対象講座の限定といった条件があり、誰にでも合うわけではありません。
厚生労働省の教育訓練給付とは別制度で併用もできないため、まずは自分の状況(在職か離職か、転職するか、学びたい分野)を整理し、合うほうの制度を選ぶことが大切です。数値や公募状況は変わり得るので、最後は必ず公式で確認しましょう。
管轄は経産省(教育訓練給付=厚労省とは別・併用不可)。対象は在職者で転職を目指す人。補助は受講修了で1/2・上限40万円+転職1年継続で1/5・上限16万円=最大56万円。申込は採択された補助事業者経由でキャリア相談から。2026年6月時点で七次公募は未定だが事業は令和8年度末まで継続予定。数値・条件・受給可否は公式で要確認。
補助の対象になりそうなら、まずは転職に合うスキルとスクールを比較で絞り、気になる補助事業者のキャリア相談へ。迷うなら診断で向いている方向を確認すると動きやすくなります。

